あなたが食べたのは、春・夏、どっちの海ぶどう？（第一牧志公設市場・魚久鮮魚）

沖縄の地で「海ぶどう」を食べたことがある方は多いだろう。
あなたが食べたのは、春？　それとも夏？
実は、海ぶどうにも旬があるのをご存知だろうか。目利きのプロによると海ぶどうにも時期によって違いがあるそうだ。

近年の沖縄ブームで需要が高まり、天然の海ぶどうが減少してしまう中で沖縄では養殖業が盛んだ。
海ぶどうの養殖で沖縄県の拠点産地認定を受け、沖縄で初めて海ぶどうの養殖に取り組み、その高い技術力が評価されている恩納村漁業協働組合を訪ねた。

那覇空港から一般道を西海岸沿いに1時間半ほど北上すると、山や川などの豊かな自然と海岸全域が沖縄海岸国定公園に属する恩納村（おんなそん）だ。「万座毛」や「青の洞窟」など人気の観光地も多く、自然を眺めながら宿泊できるリゾートホテルも立ち並ぶ。

その一つ、「ムーンビーチ」の愛称で親しまれるザ・ムーンビーチミュージアムリゾートの隣に、恩納村漁協協同組合（以下、漁協）がある。

漁協を訪れると、ハウスの中には大きな水槽がいくつも並び、水音が耳に心地よく響く。

そこに一人の男性がやって来た。長年養殖に携わってきたベテランの漁協の工場長、當眞（とうま）さんだ。

「海ぶどうは一般的に、夏場は海水温が上がるので房が痩せてしまうんです」と當眞さん。

そこで、漁協では高水温でも生育がいい「夏株」を利用し、10月頃まで美味しくいただけるよう工夫している。逆に寒む過ぎて粒がしぼんでしまう冬場は低水温に強い「冬株」に変えることで、一年を通して美味しい海ぶどうを育てることに成功した。
さらに、研究を重ね「水温・太陽光・栄養」の三つを維持管理することで、質の良い海ぶどうを育てている。

海ぶどうは収穫後、當眞さんの指導により漁協の工場職員による厳しい目で選別される。

「商品として出せない、出来のよくないものは受け取らない」ときっぱり。

普段は温厚で人当たりのよい當眞さんだが、仕事に対するこの厳しさが恩納村漁協の海ぶどうの質の高さにつながっている。

そんな海ぶどうに惚れ込み、毎朝、高速で片道１時間近くかけて恩納村漁協へ行き直接仕入れているのは、那覇市の第一牧志公設市場にある鮮魚店「魚久鮮魚」のパパさんこと久高唯光さんだ。
そして、恩納村が海ぶどうを販売し始めた一番最初の頃からずっと目利きをしてきたのが妻の佐智子さん。40年余りプロとして厳しい目で魚介類を仕入れてきた自信ある逸品の一つだ。

「いろんな所を回ったけど恩納村漁協のものは上等！やっぱり弾力があって他と違う。海ぶどうにもランクがあるんですよ。昔から私は色々厳しく言うからね、恩納村漁協の中でもいい物だよ。」

そんな佐智子さんの想いは店頭に立つ娘のあやさんにも引き継がれている。

2023年3月19日にリニューアルオープンした那覇市の第一牧志公設市場１階にある「魚久鮮魚」にて

一年中一定の品質が保たれているので素人目には違いが分からないが、プロの目利きにかかると違いがあるそうで、注文しても断られる時がある。

「どれも同じだと思うだろうが、私に言わせると全く違う！見るだけでは分からないが、触ったらすぐに分かる。出荷する時の状態、その時の水の絞り方、発育具合で全然違う。漁協もいいものを作り選別してくれるが、どうしても気になる時は口酸っぱく伝えている。特に県外に郵送するものは日数もかかるからしっかりしたいいものを仕入れて届けたい。」と、あやさん。

そんなプロが太鼓判を押すのが、まさに今。海ぶどうの「旬」だ！

「梅雨の時期に育ったものは日照不足で実が細くなってくるし、暑過ぎる時期も私たちにとっては納得できる質とは言えない。販売出来るかどうかは私たちの目で責任をもって判断します。」

良いものの中でもさらに美味しいものを、より美味しい旬の時期に食べてほしいというプロの心意気だ。

あなたが海ぶどうを食べたのは、春？　それとも夏ですか？
本格的な夏が来る前に、今ならまだ間に合う。
旬の海ぶどう、ぜひ一度お好きな泡盛と味わってみませんか！