15年後、首里城の御庭(うなー)で琉舞を踊りたい

化粧水、美容液、クリームなど化粧品を使ってくださっているイーノ歴16年。
沖縄県那覇市の宮城須美子(みやぎすみこ)さん、85歳。

待ち合わせの市内の公民館に行くと、宮城さんは手作りの美しい草花の刺繍の衣装で出迎えてくれた。中東の人々の民族衣装のよう。

「とっても素敵ですね~」と、つい心の声がもれてしまった。

「いさかさん、っていうのね。濁点はつかないの?い、ざ、か、や、って。私のことは、すーちゃんと呼んでね♪」と宮城さん。

なんてチャーミングなんだろう。一気に心を掴まれた。

フラダンス教室2箇所、琉球舞踊、自彊術(じきょうじゅつ)、カラオケと5つの習い事をしている。以前は、これに加えて、フォークダンス、マンドリン、ギター、ピアノ、琴、三味線も習っていた。

いろんなことにチャレンジしてきたすーちゃんだけれども毎日パワフルなわけではないらしい。

「朝起きたときに、腰が痛くて気持ちも萎えてしまいそうになるよ。でもね、ニッコリ笑って、“腰だけでよかったー、歩けるー”って言うの」。

無理は決してしないが、落ち込むこともない。

「以前は10できていたことも、今では5しかできない。料理も、一度に食卓に運ぶんじゃなくて、わざと何回かに分ける。毎日の行動は、全てリハビリ」

歳を重ね、できなくなってきたことも受け入れる。
だけど、できることを精一杯、楽しんでやる。「嫌なこと、難儀なことこそ逃げないでやろうと思っているの」。この前向きな気持ちが大切だとおしえられた。

すーちゃんには、父から教わった一言がある。

「人間は、全て口から入る」

食事の大切さばかりではない。
話すこと、言葉を何より大切にしている。
お互いの心を通わせ、心を分かち合うことができるからだ。

言葉を通して人と繋がるからこそ、お口のケアも怠ってはいない。

にっこり笑った歯は、すべて自分の歯だという。
ちゃんとケアされた白い歯と聴き取りやすい言葉から、すーちゃんがいつも笑顔でイキイキしている様子が目に浮かんだ

40年余の教員生活で、出会った生徒は2千人を超える。その全員の名前を覚えているという。
「新人だったときには、男の子にスカートめくりをされてね、そんな子も今では70代。この前もマンゴーとか山羊汁(やぎじる)が届いたよ」と今でも交流が続いている。
年に1度は生徒たちと会い近況報告をしているそうだ。

心の交流を続けるすーちゃんは、今でも人との出会いを楽しみにしている。
だからこそ、新しい自分と出会うチャレンジが続けられるのだろう。

「5年後の90歳でやりたいことはありますか?」と区切りの年のことを尋ねた。

「今の夢は、100歳に、主人と二人で『かぎやで風』を踊ること。十五夜の月に照らされた首里城の御庭(うなー)でね」

すーちゃんの瞳は強く、声は弾んでいた。

※琉球王国の歴史を伝える首里城は、沖縄県民のアイデンティティーの象徴。2019年、火事で焼失したが、2026年の復興を目指しています。

※「かぎやで風」は「御前風(ぐじんふう)」ともいう。祝いの幕引きに踊る琉舞の古典曲。翁媼が長寿を祝う。

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