魚湧く海、海の畑と言われるほど
生産力がとても高い沖縄の海
琉球大学名誉教授 渡久山 章
沖縄の海は大きく2つに分けられます。
海の畑とも呼ばれるイノー
1つはイノーで、陸地とサンゴ礁(リーフ)に囲まれ、浅くて造礁サンゴが育ち、砂地などもあって、エメラルドグリーンやコバルトブルーに染まる海。そこは浅いため、子供やお年寄りが入っていっても安全な海。それに村の近くにあるので、魚や海藻類を獲ったりするにも都合のいい海です。そのため、赤土などの汚染物が入ってこなければ、魚湧く海とか海の畑とか言われ、生産力がとても高い海です。沖縄の人々は昔からこのイノーによって支えられてきました。
あと1つは、久米島海洋深層水が採られている海のように、サンゴ礁の外の海、外洋です(宮古伊良部島の方言ではアラパといいます)。そこは深くて群青色や紺碧に染まった海。篠原鳳作さんが「しんしんと肺碧きまで海の旅」(鹿児島から宮古島まで船旅をした時、海を見ながら息をしていると、空気と一緒に海の碧(あお)さが入ってきて肺まで染めてしまいそう)と詠んだ海ですね。沖縄の海は大きく分けると、以上のように2つに分けられると思います。
久米島の海
イノーが抱えている問題
 ところが最近は、土地開発による赤土や軍事基地などから汚染物が流されている海(所)があります。赤土など汚染物が入ってきたため、魚介類が減り、モズクなど養殖物が被害を受け、アーサ(ヒトエグサ)も獲れなくなっているということが写真入りで報道されたりします。 イノーは陸地とサンゴ礁に囲まれ、くぼ地になっているため、汚染物を貯めやすい形になっています。イノーに貯まった汚染物は台風があると攪乱され、リーフの割
れ目やリーフを飛び越えたりして、外洋に運ばれていくことも調べられています。しかし、汚染物などの流入が多いと、ダメージを受けてしまいます。もともとは生産力の高いイノーもさらに2つに分けなければならなくなっているんです。健全な状態が保たれているイノーと、赤土など汚染物が流入しているイノーとですね。イノーの埋め立ても問題です。埋め立ては多くの生き物を埋めてしまいますし、彼らの住み家を奪ってしまいます。イノーは浅いため、埋められやすいんですね。浅くて安全な海なのに、それが逆手に取られている場所があります。
北海道の海と沖縄の海の違い
北海道へ行って港を見たことのある人ならだれもが、船の多さとカモメが群れ飛んでいることに気付くことでしょう。沖縄の港と比べると、船の数や鳥の数はケタ違いでしょう。どうしてでしょうか?北海道の海には養分が多くて、魚が沢山獲れるからです。海では養分は下の方に貯まっています。それは、陸地から川を通って流れてきた養分(木の葉や動物の死がいなど)や、海の表面で生育した海藻や海草が死んでし
まうと、粒子になって海の下の方に沈んでいくからです。それら粒子は実は養分なんですね。ところで水は温度が低い程重くなります。北海道の海は表面の水が下の方の水より重いため、沈んでいきます。重たい水が沈んでいくと、下にあった養分の多い水は上がってきます。そのため、上の方で生物の生産活動が活発になって、魚が多くなり、鳥も群れるというわけです。
それに対して沖縄では、書きましたようにイノーは、生産力が高いのですが、外洋では対流が起こらず、下から養分が上がってきません。上の水が温度が高くて、軽いためです。ただ、沖縄の外洋の表面にも陸地と海で生産された養分は北海道に比べると少ないのですが入ってきます。けれども水温が高く生物活動も活発なため、養分が来るとすぐに食べられてしまうと思われます。すると海の上の方も濁り(それは養分です)が少なく、清澄で透明度が高くなるわけです。例えば慶良間の島々の海ですね。そこは透明度が40 mあるといわれています。40 mも光が届きます。慶良間の海には汚染物の流入が少ないわけです。
1978年頃の沖縄北部の名護にある普久川(ふくがわ)滝
水質調査の様子
久米島海洋深層水とイーノ洗顔シリーズの関係について
 私達の会社で販売しているイーノ洗顔シリーズの基には、久米島海洋深層水が使われています。久米島(面積54㎢)は慶良間の島々よりは大きいのですが、それでも小さな島です。久米島海洋深層水は、そんな島で陸地から2.3 kmも離れた所で、612 mの深さから採られています。陸地からの汚染物流入はとても少なく、清澄な海水です。その特徴は3つ挙げられます。1つは、612 mもの深さから採っているので、水温が9~10℃と低いことです。太陽によって直接温められることがないので、海の水は深くなるほど水温は低くなります。
この特徴は低温安定性といわれています。水温が年間を通してほとんど変化せず、安定しているからです。 2つ目は、細菌類が少ないことです。ご存知のように、食べ残しなど(それらは有機物です)をほっておくと、腐敗します。それは無数の細菌類が付いて、食べているからですね。ところが海洋深層水には細菌が付くような有機物がとても少ない。何故かといいますと、有機物はすでに海の上の方でいろいろな生き物によって、食べられ分解されてしまっているからです。そのため、海洋深層水には有機物を食べる細菌類も少なくなるわけです。この特徴は、清浄性といわれています。 3つ目の特徴は、栄養物質が多いことです。これは2番目に挙げた細菌が少ないことと関係することで、有機物は海の上の方で分解されて、下にはその有機物を作っていた物質(これが栄養物質です)が落ちてきます。そのため、海では栄養物質は下の方に多くなります。この特徴は富栄養性といわれています。北海道の海ではこの下の水が上がっていくわけです。しかし、久米島の海では下の水があがってこなくて、栄養物質は下の方程多くなっています。
このように、細菌類が少なく、栄養物質が多いため、久米島にある研究所では、高級魚の飼育実験がなされたりします。又他のグループですが、栄養分の多い下の水をポンプアップして表面の水と混ぜ、生産量を増やそうという研究もなされています。
 私達の会社が販売しているイーノ洗顔シリーズの基は久米島海洋深層水ですが、その海水をそのまんま使っているのではありません。海洋深層水を水・塩・ミネラルに分け、精製した後、化粧品の原料として新たに生まれ変わったものを使っています。海洋深層水の特徴(細菌類の少なさ)を生かしながら、海洋深層水から取ったミネラル分を調整して、化粧品としてのすぐれた原料を作っています。

琉球大学名誉教授。1943年宮古島伊良部に生まれる。1970年に琉球大学に就職。理学部教員を38年勤め、現在はe-no株式会社に入社、品質管理を担当。

【学位】1971年 理学博士 名古屋大学

【専門分野】地球化学, 環境化学 (Geochemistry, Environmental Chemistry)

【主な所属学会】日本地球化学会

【所属団体】沖縄環境ネットワーク 宮古の自然と文化を考える会

【所属団体】沖縄環境ネットワーク 宮古の自然と文化を考える会

【所属団体】沖縄環境ネットワーク 宮古の自然と文化を考える会

【学術等の受賞】1971年 朝日新聞社朝日学術奨励賞 「沖縄地域のサンゴ礁物質を通してみた海水の化学」1983年 工業用水論文賞 「沖縄本島塩川の湧出機構」 1991年 工業用水論文賞 「沖縄の島々における降水, 河川水, 地下水の硝酸塩濃度」

渡久山 章

とくやま あきら

沖縄の女性と海の話
“むか〜し、むかし非常に美しい娘が、蛇の子を身ごもってしまいます。娘は、フーチ餅(よもぎ餅)を持って浜に下り、誰も踏んでいない白砂を通り抜けて、 海の水を3度かぶると、たちまち元の美しい身体に戻りました”という民話もあるように、沖縄では女性たちが 浜へ下り海水で身を清める「ハマウリ/浜下り」という風習があります。美しい海は、人々の生活を支えると同時に、神聖な力があると信じられて きました。身を清めるという意味では、アトピーや湿疹ができると海の水で洗い流すという風習は今も続いています。
ゆったり、ゆっくり、癒しのイノー(海畑)
沖縄の海…特に海の干潟、沖縄の方言でイノー(海畑)には、サンゴ礁のリーフに囲まれ、海藻、 小さなお魚(カクレクマノミ、ミルリスズメダイ)、貝類(ウニ、ガンガゼ)そして、なまこ等の生き物が共存。沖縄の人々は、イノーから海の恩恵を受けているのです。
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