【沖縄とんでもない物語・お菓子編】超カラフルな法事用お菓子

ハスの花をイメージした琉球王朝時代の代表的な琉球菓子の一つ「千寿糕」(せんじゅこう)

「なんでこんなにカラフルなの?」「なんでこんな形なの?」
なんでこんなに…
沖縄生まれの私にとって沖縄の伝統菓子は、見たことはあっても、実は名前も知らないお菓子も多く、食べたことがあるものは少ないんです。確かに、なぜこんなにカラフルなんだろう?

琉球菓子の本で見つけて思わず二度見した「千寿糕」(せんじゅこう)。普段のお菓子ではあまり見かけないショッキングピンクと黄色、緑色。実はこの「千寿糕」、形はハスの花をイメージし、以前は色付けに、緑は季節の「青菜」、黄は「くちなし」。赤は「正延紫」(しょうえんし)(※現在は使用されていません)と呼ばれる、中国南部に自生する樹木に寄生する小さな虫を乾燥させてつくられた色で、江戸時代に中国から渡来した鮮やかな紅色の染料。綿に滲ませて乾燥させてあったそうです。今の私にとっての「当たり前」は人工着色料だったことにハッとしました。

三十三回忌は「お祝い」

このカラフルな「千寿糕」、なんと法事用の盛り菓子だったのです。中でも一番の「とんでもない」は、お供えする回忌によって三色の濃さが変わること。一、三回忌は色を控え、七回忌でほんのり色を出し、三十三回忌で華やかな色を施していたようです。三十三回忌は、亡くなった方が先祖たちの元へ「旅立つ」とされ、それまでは法事料理も色のついた食べ物は控えられていたようです。でもこの日は、法事というよりも祝い事として、家族の重ねた想いを「色」に込めたお菓子で伝えていたんだと知り温かみも感じました。真っ直ぐ伝えたい先祖への想い、先祖と家族が寄り添っていた時間が菓子の色に込められているから、三十三回忌は晴れやかにお祝いするのだと腑に落ちた気がしました。

沖縄本土復帰前後に、姿を消し「幻のお菓子」と言われた「千寿糕」。10年ほど前に小説『テンペスト』(池上永一)を原作にしたテレビドラマに登場し、一躍知られるようになりました。それでも作られているのは、老舗の菓子店が1店舗のみ。実際に、琉球菓子が豊富に置いてある那覇市の公設市場の菓子屋をたずねると、「ここでは販売していません」と言われました。老舗の菓子店を回っても作っておらず、3店舗目でようやく見つけることができました。

「千寿糕」は、小麦粉でラードを捏ねた皮にピーナツバター、胡麻、橘餅(きっぱん)をまぜた餡を包み、筒状にヒダをつけ、カラフルに色つけされています。大きさはプチケーキサイズで、しっかりした生地のため、店員の方に「4等分が食べやすくてちょうどいいですよ」と教えてもらいました。
固めの生地のどっしり、サクサクした食感と、餡の胡麻の優しい甘さを一緒に味わっていたら、口の中にフワッと広がる柑橘オレンジの香り。カラフルな見た目からは想像できなかった甘みと香りがぎゅっと詰まった爽やかさに出会いました。
超カラフル菓子に込められた沖縄の心。「千寿糕」は、先祖を敬うこと、その想いを自分なりに表現したいと思わせてくれた琉球菓子でした。
これからも、沖縄の伝統菓子を訪ね歩き、昔と今の沖縄の暮らしをじっくり味わってみたいです。

見た目には気づかない、オレンジピールの風味のほろ苦さがクセになりそう。
左上)のまんじゅう 中央上)松風 右)花ぼうる
左下)千寿糕 中央)コーグヮーシー 中央下)金楚糕

この記事を書いた人

お客様担当 中地 香苗 (なかち・かなえ)

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