【渡久山章先生の子に聞かせたい昔話】想像力と創作力を育む

人に近いところに住む姿が、雀孝行物語に例えられている。

ツバメとスズメ

昔ツバメとスズメは姉妹だった。2人は大人になって、出稼ぎに行った。出先で働いていると、親が病気になっているという知らせが届いた。妹のスズメは仕事着のまま飛んで帰り、親の看病をして見送った。ところが姉のツバメは、せっかく仕事に出ているから着飾って帰りたいと、スディナ・カカム(八重山で踊りの時着る衣装。上は黒で下は白)を織り上げ、着けて帰った。しかし、家に着いてみると、親はすでに亡くなっていた。

そんな様子を見ていた神様から「スズメは親孝行者なので、人間の家のひさしに巣を作って、人が作った穀物を食べて暮らしなさい」と言われた。「ツバメは親不孝者なので、たまにしか家に寄るな、寄ったとしても雨風に打たれて飛び回りながら、虫を取って食べなさい」と言われたという話である。
ここでは、八重山に伝わっている話を挙げたが、実はこの話はスズメ孝行物語として、北海道から八重山まで全国に伝わっている。

春になると沖縄を通って北へ向かい、台風が増える秋頃に渡ってくるツバメ。

さて、昔話は県内でも各島々に数多く話されてきている。それらの中にはここに挙げた「ツバメとスズメは姉妹であった」というような本当はあり得ないことを題材にした話も多い。
そんな昔話に触れていると、あり得ないような題材を挙げて話を展開するのはなぜなのか? と思ったこともある。しかし考えてみると、現実から離れたところにある題材を使っても、人は想像力を働かせ、創作に向かうことになるのではないかと思うのである。
私たちは、小説や歌など想像力を駆使して創り上げられた作品に目を凝らし、耳を傾ける。それは、作者の想像力と創作力に引かれるからではないか。
おそらく全ての昔話の中にも、人の本性たる想像力(思い、考える力)と創作力(創り上げる力)が発揮されているのではないかと思う。そのため子どもたちに昔話を話して聞かせることによって、知らず知らずのうちに、人間の本性を頭と体に植え付けていくのではないかと思われる。これからも多くの昔話を聞かせる大事さを思う。
子供の頃培った想像力と創造力(創作力)は大人になって、いろいろな分野の仕事に関わるようになった時、発揮されるのではないか。優れた科学の発見もおそらく想像力と創造力の合作ではないかと思う。
昔話の中には、人の本性が含まれており、少し大げさにいえば、昔話を通して人間を発見できるのではないかと思う。

渡久山章先生の出身地である宮古島伊良部

宮古島では八重山諸島に伝わっているツバメのイメージとは違い、『神様の遣い』と言われています。豆まきをする春と、収穫の時期の秋に宮古島を訪れ、その様子を見守っているような姿が、神様に遣わされたように宮古の人々には見えたと言われています。

この記事を書いた人

渡久 山章(とくやま・あきら)先生
1943年生まれ、宮古島出身、琉球大学名誉教授。地球化学、環境化学を専門分野に海水の化学など数々の学術や論文で受賞する沖縄の水に関する専門家。

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